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日本

唐代小説集『河東記』詳注(上下)

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唐代小説集『河東記』詳注(上下)

著者
赤井益久 岡田充博 澤崎久和訳
出版社
汲古書院
出版年月日
2024.05
価格
\27,500
ページ数
716
ISBN番号
9784762967450
説明
中国小説史の空白を埋める貴重資料を詳細な注で明らかにする。
【「はじめに」より】(抜粋)
 『河東記』は、唐の開成(八三六〜八四〇)頃の成立と推測される、志怪伝奇小説集である。周知のように中国古典小説は、唐代(六一八〜九〇七)において飛躍的な発展を遂げ、特に中晩唐期には、後世名作と称される短編や著名な作品集を輩出した。当時の知識人層が小説という新しいジャンルに大きな関心を寄せる風潮のなかで、この小説集も誕生したと考えられる。
 ただ、この時代の多くの小説集と同様、『河東記』成立に関する詳細は不明で、しかも早くに散逸して伝わらない。『太平広記』をもとに収集できる現存作品は三十四篇で、中国文学史あるいは小説史の記述においても、しばしば省略の憂き目に遭っている。そうした知名度の低い、謂わば埋もれかけた小説集ではあるが、現存の諸篇を通覧してみると、貴重な資料的価値や、高い文学的完成度を有する作品に行き当たって思わず胸弾むこともある。たとえば「板橋三娘子」の一篇は、実は古代インドの説話集『カター・サリット・サーガラ』や、アラブの長編物語『アラビアン・ナイト』と繋がりを持つ翻案小説で、唐代における異域からの説話の伝播と変容を具体的に示してくれる。「蕭洞玄」の話も翻案小説で、「杜子春」(芥川龍之介の同名小説の原話として知られる)と共に、玄奘『大唐西域記』が中国に伝えたインドの民間伝承を原話としている。また化虎譚の「申屠澄」は、著名な「李徵(人虎伝)」とは趣を異にした秀作と言えよう。